「シングルカット版軽自動車」規格創設で売上は伸びるし若者も買えるはず
軽自動車が売れてない今こそ、「シングル軽」を作ろう!(オー!!)
というわけで軽自動車が売れてない。
2017年1月から4月まで軽自動車の販売成績はずっと前年実績を下回ってきた。
ようやく前年同月比を上回ったのは最新データである2017年の5月。ただしこれも燃費不正問題で販売を販売を停止していた三菱自動車と日産自動車が販売を4月に再開したことが主な原因で軽自動車全体としてはいまだに不調であるって言うのは間違いない。
シングルカット版軽自動車って何?という方は多いと思う。
それも当然、今私が作った言葉だからだ。
その内容については追って紹介するとして、まずは軽自動車販売の背景を見てみよー。
データ(文末「※参考」を見てね)で振り返ってみると軽自動車の販売台数の増大は「規格改訂での増大」と「消費税の駆け込み需要」がすげえ重要なカギを握ってるんだよね奥さん(キャラぶれ)。
ここ40年での軽規格改訂は3回、消費税は導入・増税の合計が同じく3回あって、それと軽自動車の販売台数との相関は
「規格拡大で販売増」「そのあと減」
「消費増税直前に販売増」「そのあと大幅減」
……の繰り返し
簡単に言うと
「軽規格を大きくすれば売れて」
「消費税を大きくすると減って」
をヘビーローテションしているでござるよ
(あと、2016年は軽自動車税がアップしたのも効いてる。あと、いまいち自分のキャラが確定できていない)。
ここで軽自動車の販売台数アップにはどうすればいいのかという話に戻ろう。
「消費税を減らせ!」
確かにそうだけど、ちょっと無理そう。
「軽自動車規格を拡大しよう!」
うーん、それは慎重にしたほうがよさそう。
これ以上サイズアップしちゃうと「普通車に比べて優遇されすぎてる」って論議を招いて、やぶ蛇の予感。
ではどうすればいいんだろうか?
そこでおすすめしたいのが「シングルCD方式の規格追加」だ。
若い読者のために説明すると、シングルCDというのは1988年、直径12cmの”オリジナル”CDに後出しジャンケンで設定された直径8cmのミニサイズCDのことだ。
これは書き込み・読み出し方式ともに12cmCDと完全互換がありつつ、データ容量を少ないということを理由に価格設定を安くできたことで市場を拡大した。
このシングルCDの画期的なところは、元の規格をキープできたことだ。
録音媒体業界ではオープンリールからテープ、テープからCDへの移行過程では常に「拡大方向の規格変更」によって、それぞれ一個前の規格が(ほぼ)ナシになっちゃったんだけど、シングルCDは「縮小方向の追加規格」という協調性の高さ(日本人的!)からすんなり溶け込んで、かつ全体の市場が拡大したのだった。
というわけで軽自動車にもシングル軽自動車を作りましょう。
パワーユニットを変えるとコストがかかるから排気量は660ccのままで、ボディサイズを大幅カットして、税金も今の半分にして車庫証明不要……とかにするってのはどう?で、価格も50万円くらいにしたら若者にも買える気配が濃厚。
これが「パーソナルモビリティ」
「それって各社が実証実験中の『パーソナルモビリティ』では?」の声もあるだろうが、そっちは新規シャシーでEVだったりして、作るの大変そう。すると新車価格も上がるし、それにあれ、ドアがないってことはエアコンないんですよね?エアコンは欲しいなあ……というわけで出てくるのが「今ある軽自動車のボディサイズだけぶった切って=シングルカットしてお手頃価格で提供する方式こと『シングル軽』」です。
実はこのシングル軽、既に1996年に「ダイハツ・ミゼットII(1996年)」が軽規格最大サイズより全長・全幅ともに10cmカットして販売してます(エンジンはハイゼットと同じ。新車価格47万9000円!)。
これは軽自動車規格より小さい「ミゼットII」。シングル軽って既に販売実績があるのだ。
しかもこのシングル軽、その後も「スズキ・ツイン(2003年)」、「スバルR1(2005年)」などのフォロワーが出てたんですよね。
これなら従来の軽規格改訂と違って導入コストが低いし、普通車との軋轢も生じないので一度試してみたらどうでしょうかー……と、ふわっとした感じで国交省に言ってみる。
(ウナ丼)
※参考:軽自動車規格拡大や消費税導入・増税と販売台数(前年対比)
・1976年、軽自動車規格拡大1……販売台数30.5%増
・1989年、消費税3%導入……駆け込み需要で211.5%増(!)
・1990年、軽自動車規格拡大2……73.9%増
(翌年マイナス4.5%)
・1994年、2年後の消費増税を発表……94年度4.6%増、95年度13.8%増
・1997年、消費税5%に引き上げ……マイナス10.8%
・1998年、軽自動車規格拡大3……98年に20.5%増、99年に11.7%増(00年マイナス0.3%)
・2012年、2年後の消費増税を発表……12年度23%増、13年度15.9%増
・2014年、消費税5%に引き上げ……14年マイナス3.3%、15年マイナス18.9%、16年マイナス6.3%
……以上、数字ばかりが続いて申し訳ない。
F1やル・マンと販売成績は関係ない!? いえいえ、関係大ありです
6月25日のF1アゼルバイジャンGPでようやくポイントを獲得できたものの、マクラーレン・ホンダはもうぶっち切りで最下位。その前週のWECル・マン24時間でもトヨタが残念な結果に終わってる(クルマ好きから見たら超健闘の内容ってのはわかってますが)というのが、日本メーカーの世界トップカテゴリー・モータースポーツ参戦状況。
こうなると心配なのは、あんまりクルマに思い入れのない人(別名:株主)からの「レースで得られるブランドイメージなんて販売成績に関係ないんだからカネの無駄」的バッシングです。
調べてみるとたとえば2015年のF1で、チームへホンダが支払ったパートナー料は300億円弱で確かに安くない。
それで勝ちまくってるならまだしも、負けてるとあれば、メーカーのレース担当者さんは胃の痛い毎日でしょう。
だがしかし! ここでそんな担当者さんに朗報です。今回調べてみたところ、F1やWECで得られるブランドイメージの、業績への関連性は不透明どころかめちゃくちゃあり、というかむしろ、撤退すると販売成績が落ちるというダイレクトな数値が浮かび上がってきたので報告します。
調査したのは欧州におけるトヨタとホンダの販売シェア推移と、WEC/F1参戦の関連性です。場所をヨーロッパにしたのはモータースポーツが文化として根付いている地域と言われているから。また、販売台数ではなくシェアとしたのは、景気変動とは無関係に「メーカーの地位=ブランドがどう変化しているのか」を知るためです。
ではさっそくトヨタを見ていきましょう。ちょうど20年前の1997年からのデータです。
●トヨタ欧州シェア推移:モータースポーツ参戦状況(カッコ内は特記事項)
「※」は注目すべき箇所
1997年・2.81%:ル・マン不参加
1998年・3.00%:ル・マン1年ぶりの復帰。以降、ほぼ毎年参戦
1999年・3.13%
2000年・3.60%
2001年・3.58%
2002年・4.27%:F1参戦開始(※シェアが大きく向上)
2003年・4.69%:F1参戦2年目(シェアがさらに向上)
2004年・5.05%(以降、シェアはどんどん拡大)
2005年・5.24%
2006年・5.61%
2007年・5.70%
2008年・5.14%
2009年・4.88%:F1撤退
2010年・4.29%(※大きくシェア下落)
2011年・3.96%:ル・マン参戦中断(モータースポーツ空白期。※直前までの9年で最低のシェアに)
2012年・4.13%:ル・マン参戦再開(再びシェア向上)
2013年・4.16%
2014年・4.07%
2015年・3.94%
2016年・3.97%:現在もル・マン参戦継続中(※安定して高い水準のシェアをキープ)
……どうでしょうか? ちょっと出来過ぎなくらいモータースポーツ参戦とシェアが変動しているのがわかります。
では続いてホンダを見ていきましょう。
●ホンダ欧州シェア推移:モータースポーツ参戦状況(カッコ内は特記事項)
「※」は注目すべき箇所
1997年・1.61%:F1不参加
1998年・1.50%(※シェアがじわじわと下落)
1999年・1.42%
2000年・1.26%:エンジン供給でのF1参戦
2001年・1.07%:シャシー開発にも加わる
2002年・1.25%(シェア回復)
2003年・1.36%(※参戦中のシェアは上昇基調)
2004年・1.62%
2005年・1.70%
2006年・1.79%:ホンダ純ワークス体制に移行(シェアさらに拡大)
2007年・1.99%
2008年・1.83%:F1撤退(※これ以降、シェアは縮小)
2009年・1.79%
2010年・1.45%
2011年・1.18%
2012年・1.12%
2013年・1.14%
2014年・1.02%
2015年・0.93%:F1復帰
2016年・1.06%(※チームとしては低迷もシェア回復)
……ホンダのほうはトヨタよりもさらに明確に販売シェアとモータースポーツがリンクしているという結果が出ました。やっぱりモータースポーツに参戦することでブランドイメージは向上するんですね。
さて、この調査結果を見て「モータースポーツでのブランドイメージが販売成績に関係しているかどうかは証明できないだろう」と言う人もいるでしょう。実は筆者もそう思います。
ただ、企業の持つブランド価値というのは「存在することはわかっているけれど、それが今いくらなのか、また、どの要素がブランドに寄与しているのかはわからない」というのが定説なんです。
だから各企業のブランディング担当はとっても大変なんですよ。たとえばブランド論の第一人者でカリフォルニア大学教授のデービッド・アーカー氏の著作『ブランド論』(ダイヤモンド社)によれば企業のブランドイメージ向上の達成は「よくて困難、下手すると不可能に近い」ほど難しいもの。「そもそもブランド価値というものは絶対的な計測方法がない」からとも付け足しています。
ただ同時に教授は「計測方法がないからといって何もしないとブランド力はそもそも生まれないし、既に持っている場合にはどんどん目減りしていく」とも言ってます。
このため、各メーカーのブランディング担当者は数少ない「数値化できている(と思える)ブランド価値」に頼るわけです。
この、数値化できている例としてはブランド界の格付け機関「インターブランド」「ミルワードブラウン」での世界ランキングなどがありますが、実はこれだってランキングの判断指標は公開していませんから、不透明とも言えます。でも、インターブランド発表の最新結果、2016年の世界トップ4ブランドが「アップル」「グーグル」「コカ・コーラ」「マイクロソフト」の順だと聞いて完全否定する人はいないでしょう。賛否ありつつもミシュランガイドが的確にレストランのブランド価値を表しているのと同様です。
なので今回調べた「モータースポーツ参戦とマーケットシェアの関連性」のような、数値で得られるデータは非常に重要なわけです。
というわけで結論。WEC継続参戦を発表したりWRCに注力するトヨタさんは是非とも自信を持って今後もモータースポーツにエントリーし続けてください。そして戦績不振にあえぐホンダさん、というかホンダF1担当者の皆さんはこのデータを基に、上層部に参戦継続を掛け合ってください。……え、そんなの既にやってる!? そりゃそうですよねー。
(ウナ丼)
■欧州販売台数(Carsalesbase.com)
http://carsalesbase.com/